中村ペインクリニック 痛みの治療・実践編

「中村ペインクリニック 痛みの治療・実践編」では、種々の疾患について治療法を記します。受診された多くの方々に良好な評価をいただいていますが、全ての方に最良の結果がもたらされるとは限らないことをご承知おき下さい。

 

中村ペインクリニックでの一般的な治療の流れ

前ページ「中村ペインクリニック 痛みの治療・基礎編」にも書きましたが、中村ペインクリニックにおける一般的な治療の流れは、問診・触診~消炎鎮痛処置(電気治療)~神経ブロック(神経を休ませ,血管を広げる)~局注(筋肉やそれを包む筋膜の過緊張をなくす)~安静(十分に注射の効果を引き出すためにベッドで休む)です。

 

神経ブロックや局注には、局所麻酔薬(局麻薬)を用います。局麻薬は麻酔作用があるので神経を休ませる作用があることは想像できると思います。この場合、解説の対象となっているのは痛みを脳に伝える知覚神経(感覚神経)ですが、筋肉を動かす運動神経や自律神経の一部で緊張や収縮に関わっている交感神経にも作用するため、局所(「注射の影響を受ける部位」といった意味です)の筋肉を弛緩させ、血管(主に動脈)を拡張させます。これにより新陳代謝が盛んになり、発痛物質を除去します。

   

薬物療法について

近年、プレガバリン(リリカ®)など神経痛やしびれに有効な薬物が開発販売され、痛みの治療における大きな福音となっています。痛みの治療だから痛み止め(ステロイド剤や非ステロイド抗炎症薬 NSAIDs)を多く出すのだろうと思っている方も少なくないと思いますが、前項「中村ペインクリニックでの一般的な治療の流れ」でも書きましたように、原則的には筋弛緩や血管拡張して新陳代謝を盛んにすることが治療で最も大切なことです。中村ペインクリニックでは、漢方エキス剤、湿布・テープ剤も積極的に用い、多角的な見地から痛みの治療に取り組んでいます。

  

主な対象疾患と治療方法

ぎっくり腰

衝突、転落や転倒などしていなくて、ちょっとした日常の動作〜重いものを持ち上げようとしたなどがきっかけで、痛くて座っていられない、腰や膝に手を当てないと歩けない〜自力では歩けないのでおんぶなど介助してもらわないと移動できないような腰痛は、ほとんどの場合「ぎっくり腰(急性腰痛)」と診断されます。

 

整形外科が多用する経仙骨孔硬膜外ブロックも行いますが、腰部硬膜外ブロックの方が痛みの消退が早く確実に得られます。この際の治療のポイントは、下肢(あし,脚)の外側に多かれ少なかれほぼ必ずできている筋拘縮(凝りや張り)を消炎鎮痛処置や局注(一部、ペインクリニック医以外の医師は硬膜外ブロックを省いて、局注をトリガーポイントブロックとして行っていることがあるようです)によって解除する(=ほぐす)ことです。

 

ペインクリニックの治療の特徴は、数ヶ月〜1年に1回起こるような習慣性のあるぎっくり腰が、治療を繰り返すことで、時には一度の治療で習慣性がなくなる、すなわち「ぎっくり腰」にならなくなります。

 

高齢者では脊椎圧迫骨折のこともありますが、先ず腰部硬膜外ブロックで痛みを緩和してから精査(レントゲン〜CT・MRIなど)する方がご本人のつらさが少ないでしょう。

 

しつこい頭痛や肩こり

頭痛や肩こりが持病だと感じている20〜40代の女性にはもっと積極的にペインクリニックに受診していただきたいと思っています。この場合の神経ブロックは、副神経ブロック、肩甲背神経ブロックを選択することが多いです。局注は2〜10カ所に2〜4mLずつ行うことが多いです。治療後に「肩がこんなに軽かったなんて」、「視界が広がり明るくなった」という感想をいただくことが多いです。

 

腰部椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎分離症・すべり症による腰下肢痛

先に腰部椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、あるいは腰椎分離症・すべり症と診断されている方は、主に過労が原因で腰下肢痛が発生します。「ぎっくり腰」の項でも書きましたが、治療のポイントは、下肢外側の筋拘縮(主に太ももの外側の凝りや張り)をほぐすことです。腰部硬膜外ブロック+消炎鎮痛処置(電気治療)+局注(筋拘縮部位[特に筋肉が硬くなっているところ]に局所麻酔薬を注射します)で、痛みは大幅に軽減〜解消できます。

 

肩関節部の痛み

肩こりとは異なる肩関節周囲炎を初めとした肩関節部痛は、痛みに対する生体防御反応の結果、凍結肩やⅠ型複合局所疼痛症候群(CRPS typeⅠ)を生じることもあります。肩関節は球関節で、周りを筋肉の壁で取り囲んでいます。ペインクリニックでは、関節そのものより周囲筋の拘縮を解除することによって治癒に導きます。

 

股関節の痛み

変形性股関節症は、最終的には関節変形がひどくなって整形外科による手術になってしまうこともありますが、変形性関節症の中では比較的治療効果が早く出ます(=痛みがなくなる)。外れようとする股関節を押さえるため、股関節周囲の筋肉は緊張が強くなりすぎ股関節の運動域制限が起こります。これは生体の防御反応のため、どうしても起こってしまうものです。ですから、起こると痛いが起こらないと関節の変形が進んでしまうというジレンマがあります。ペインクリニックでは、股関節の運動域を維持しつつ痛みを取る治療を「治療の一般的な流れ」に沿って行います。

 

膝関節の痛み

膝の痛い高齢者がしばしば訴えるのが「水が溜まるが、水を抜くと抜くのが癖になる」というものです。ペインクリニック的に言うと、これは間違いです。膝に水が溜まるのは膝の防御反応であり、正しくは「(膝が自らを守るために)水を溜める」のです。

 

何から身を守っているのかというと、その敵の正体は「膝関節内で起こる摩擦による発熱(=炎症)」です。整形外科で、なぜ膝が変形するのかという答でよく言われているのが「膝の骨がこすれて削れるから」です。大雑把ではありますが、端的に言うとそうなります。半月板をすり減らすような摩擦が起こっているのですから、関節は熱を持ちます。その熱を冷ますため、膝は水を溜めるのです。そのとき、水を抜いただけでは、あるいは抜いてヒアルロン酸を入れるような治療では、膝は敵前に丸腰で放り出されたようなものです。それでは膝もたまったものではないので、また防御のため水を溜めます。これが「抜くと癖になる」と言われる理由です。

 

ですから、膝の治療の目的は「摩擦を減らす」ことになります。なぜ摩擦が起こるのかというと、膝関節を構成する大腿骨と脛骨(もうひとつ、俗に「お皿」といわれる膝蓋骨があります)の距離が近づくからです。なぜ近づくかというと、膝の周りの筋肉が縮むからです。膝の周りには、伸筋、屈筋、内転筋の3種類の筋肉があります。前2者は身体の移動(歩いたり走ったり)のための筋肉で、内転筋は身体(特に上体)のサスペンションの役割を果たしています。

 

これらの筋肉は、50年以上の継続使用によって慢性疲労となり、縮んでしまいます。顔の表情を作る以外の筋肉は関節を動かすために付いているので、必ず関節をまたいでいます。これが縮むと関節を構成している骨の距離も縮まります。その挙げ句に両者がこすれ合い出すというわけです。

 

膝の痛みを訴える方のほとんどは「膝の内側が痛い」と仰います。膝の内側には「鵞足(がそく)」という膝の周りの3種の筋肉が1種類ずつ集まるところがあり、どの筋肉が縮んでも、膝の内側が痛くなります。つまり、膝の異常は内側の痛みで表現されるわけで、どの筋肉が縮んだせいで内側が痛くなっているのか調べ、その筋肉をほぐす手立てを講じないといけないことになります。つまり縮んだ筋肉の凝りや張りを取り除けば、膝の痛みは取れます。

 

膝の悪い方はO脚になりますが、これは内転筋の長年の拘縮によるものです。弓矢の弓を想像して下さい。力が加わらなければ真っ直ぐな弓が、弦を引かれると外に張り出します。この弦の役割を縮んだ内転筋がしているのです。弦にかけた力を抜けば弓が真っ直ぐに戻るように、足も真っ直ぐになります... 理論上はそうですが、長年の変化は形までは元に戻ることを妨げます。但し、力のかかっていた時間が短いほど正常の形に近づくということは言えます。

 

膝は、正常なときは縦に長い楕円形をしています。力が加わると、三角形を経て真ん丸(鶴状膝)になります。形が変わる前に治療を始められれば、変形は極力防げます。

 

帯状疱疹の痛み・帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹(Herpes Zoster)と帯状疱疹後神経痛(PHN : post-herpetic neuralgia)の両方を併せて「ZAP(ザップ=ZAP : zoster associated pain 帯状疱疹に付随した痛み)」と称するようになりました。

痛みを伴う帯状疱疹(強い痛みを伴わない帯状疱疹もあります)は、20年くらい前までは痛みに理解のある皮膚科の場合はペインクリニックに直ぐ紹介されていましたが、有効な抗ウイルス剤ができてからは、内科医や皮膚科医が帯状疱疹の患者さんをしばらく持つようになり、どうにも痛みがコントロールできなくなってからペインクリニックに紹介することが多くなってきました。

 

帯状疱疹は、水ぼうそうのウイルスが原因で発症する文字通り「神経走行に沿って水疱(水ぶくれ)や発疹(赤い斑状のおでき)」ができる病気です。痛みが相当に強い場合、頭部・顔面・上肢の帯状疱疹やPHNには星状神経節ブロック(SGB : stellate ganglion block)を、それ以下の部位のものには硬膜外ブロックを行います。

  

スポーツ障害

ペインクリニシャンとしてのみならず、日本体育協会公認スポーツドクター(日本馬術連盟推薦)ならびに日本医師会認定健康スポーツ医として、専門分野である馬術の他、サッカー、野球を初めとした球技、ロードレーサーなどの自転車競技、シーカヤックなどのボート競技、柔道など格闘技によるスポーツ障害(傷害)にも対応しています。